脳動脈瘤の喫煙被害
喫煙による動脈硬化は、糖尿病や高コレステロール血症によるものよりも、活性酸素の関与が大きくなります。
活性酸素は弾性線維を破壊する働きがあるために、喫煙による動脈硬化では、一般の動脈硬化性変化とともに、血管の内圧に対して血管の形を保つ重要な働きがあります。
弾性線維が破壊されると、動脈の壁が圧力に耐えられなくなり、動脈瘤が出来たり、破裂して出血を起こしたりします。
アメリカのジョン・ホプキンス病院での419例の脳動脈瘤症例による症例対照調査では、動脈瘤が一つのグループの喫煙率が約60%であるのに比べて、2つあるグループでは約70%、3つ以上あるグループになると約80%という結果が出ています。
これは喫煙によって脳動脈瘤発生リスク上昇が1,8倍であることがわかり、多発性脳動脈瘤発生リスクが1,7倍になったことが証明されています。
脳動脈瘤とは?
脳の動脈の壁の一部分が、こぶや風船のように膨らんでくる病気です。
動脈の血側からかかる圧に耐え切れなくなって、動脈の膨らんだ部分が破裂すると、くも膜下出血になります。
動脈の壁に生まれつき弱い部分があって、血圧に押されて徐々にこぶのように膨らんでくる場合がほとんどであると考えられていますが、脳の動脈の動脈硬化、脳の動脈への細菌の感染、頭部外傷などが原因で起こることもあります。
タバコと循環器の病気
喫煙による体内の一酸化炭素、活性酸素、ニコチンの増加は、心臓の興奮性を高めてしまいます。
それにより、心室性期外収縮や心房細動などの不整脈のリスクを高めます。
喫煙は急性の血圧上昇を起こすほかにも、夜間の正常な血圧低下を起こしにくいノンディッパーと関係することが証明されていて、臓器への慢性血流障害の関与も指摘されています。
その中でも、喫煙による拡張型心筋症の発症率は1,39倍となっており、発症後の死亡率も通常の1,8倍にも増加してしまいます。
また、動脈硬化などのタバコ煙成分が直接作用している毒性は、糖尿病や高脂血症などとの相乗効果により、狭心症や心筋梗塞などの発症率を4〜22倍にも増加します。これは単独喫煙によるリスク増加が2倍程度なので、さらに危険であるということがよくわかります。