大動脈瘤の喫煙被害
喫煙による動脈硬化では、動脈瘤の発生が特に多くなっています。
イギリスのアデンブルック病院における210例の症例対照調査によると、腹部大動脈瘤の発症リスクは、過去の喫煙経験で3倍、現在の喫煙によっては7,6倍に増加していることがわかりました。
この結果により、1日喫煙量よりも喫煙継続期間とよく相関していることがわかり、喫煙量にかかわらず、1年の喫煙継続につき、0.04倍ずつリスクが上昇していることもわかりました。
大動脈瘤とは?
動脈硬化が進行すると、大動脈壁の弱い部分が血圧に耐えかねて膨らみ始めます。
それがこぶのように膨らんだ状態を大動脈瘤といいます。
膨らみが大きくなるにつれて、こぶの壁はどんどん薄くなっていき、ついには破裂して大出血をおこします。
こうなってしまうと身体の諸機能は低下し、死に至ることになります。
したがって大動脈瘤の治療は、こぶの破裂を予防し、破裂前に手術を行うことが必然になります。
破裂の余地は難しいのですが、5センチ以上膨らんだ動脈瘤は破裂する可能性が高いために、確認次第外科治療をオススメします。
タバコと循環器の病気
喫煙による体内の一酸化炭素、活性酸素、ニコチンの増加は、心臓の興奮性を高めてしまいます。
それにより、心室性期外収縮や心房細動などの不整脈のリスクを高めます。
喫煙は急性の血圧上昇を起こすほかにも、夜間の正常な血圧低下を起こしにくいノンディッパーと関係することが証明されていて、臓器への慢性血流障害の関与も指摘されています。
その中でも、喫煙による拡張型心筋症の発症率は1,39倍となっており、発症後の死亡率も通常の1,8倍にも増加してしまいます。
また、動脈硬化などのタバコ煙成分が直接作用している毒性は、糖尿病や高脂血症などとの相乗効果により、狭心症や心筋梗塞などの発症率を4〜22倍にも増加します。これは単独喫煙によるリスク増加が2倍程度なので、さらに危険であるということがよくわかります。